きときと長期縦走
こんにちは、登山を始めて7年目に突入しようとしている金子です。2021年度の部長を務めておりました。たまに,松本市の信毎メディアガーデンや松本駅でストリートピアノを弾いています。
信州大学ワンダーフォーゲル部では,例年夏休みに1~2週間程度の長期縦走を行っています。2020年度はコロナ禍のため長期縦走を実施できませんでした。2021年度,私は「きときと長期縦走」として以下のように8泊9日(予備日5日)の行程を計画しました(ブログの更新が遅くなってしまい申し訳ございません...)。普段のブログに比べてめっちゃ長いです。時間がある時にゆっくり読んでいただければと思います。尚,写真を撮る際はマスクを外していますが,感染症対策を講じた上で山行を実施しております。
「きときと」の名の由来は,富山県の「新鮮な」という意味の方言です。単純に響きが良かったのと,温泉に2回入れて尚且つ読売新道を登るといった,信大ワンゲルにとって”新鮮な”長期縦走,といった意味がこめられております。
私は1年生の時に,OBのOさんが計画された,「くろくろ合宿」に参加しました。当時の私は,高校時代から憧れていた北アルプス,特に剱岳に行きたくて仕方ありませんでした。また,Oさんからお話を聞く中で,「読売新道」という大変魅力的な登山道があることを知りました。結局,悪天候もあって剱岳と読売新道に行くことは叶いませんでしたが,自分が3年生で計画することになったら,この黒部山域をリベンジしたいと思うようになりました。
また,昨今のワンゲルでは,読売新道を計画に組み込むものの,いずれも下りとしての採用でした。しかし私は,せっかくなら登ってやりたいと思いました。頭おかしいと言われても致し方ないでしょう。でも,それくらい私は読売新道に,黒部に,心惹かれていたのです。読売新道が何者かについてはまた後々説明します!
一方,水晶小屋の宿泊予約が取れなかった時の代替ルートとして,裏剣方面を巡るルートも計画しましたが,結局行かなかったので何も報告することはありません。
前置きが長くなりましたが,それでは一日目から報告していきます!
一日目 室堂-別山乗越-剱沢キャンプ場
今夏の長雨の影響で,入山日が2日ずれました。やはり私は雨男なのかもしれない。入山日は黒部ダム~真砂沢ロッジの予定でしたが,長雨によって真砂沢ロッジ手前の橋が流されてしまったこと,三ノ沢雪渓の状態が良くなかったことを加味して,室堂入山に変更しました。室堂までは,電気バス,ケーブルカー,ロープウェー,トロリーバスを利用します。誰よりも荷物の大きい我々は周囲からの異様な視線を感じましたが,文明の利器はサイコーでした。
左から35kg,35kg,30kg,26kgでしょうか。皆体重の半分以上重いものを背負います。
気づいたら室堂到着です。ここから剱沢キャンプ場まで登りました。立山をバックに中々良い天気でした。
3日目にテン泊する雷鳥沢にて。バットを片手に,雷鳥沢カールをバックに写真を撮った二年のT。そうです,差し入れでバットを持たされました。なんでそんなもの差し入れするんだよ...。
途中で雨に降られましたが,別山乗越からはついに我々が最初に目指す頂,剱岳と対面しました。剱岳と対面できて皆で喜んでいます。
さすがは「試練と憧れ」。普通の山とは何かが違います。
なんとか一日目の宿泊地,剱沢キャンプ場へ。
ここのテン場は,地形の影響からか風が集まりやすく,テントを張るにも一苦労でした。張ってからもテントごと飛ばされないか,不安な夜を過ごしました。
二日目 剱沢キャンプ場-剱岳-剱沢キャンプ場
念願の剱岳へ!
朝焼けが綺麗でした。
これから行ってくるぜ...。
仁科三山をバックに。裏から見るのは新鮮。五竜だけ行けていません~。
さあ,登り始めて行くぞ。
流石剱岳,険しい岩場が続きました。一年生には怖かったかな...?
そうこうしているうちに山頂です。山頂は晴れ!すばらしかった!
剱は山頂から海が見えました。海無し県出身の私にとってはこれがまた新鮮でした。富山湾から能登半島まで見渡せました。
下りはより一層慎重にならなければなりません。個人的には,登りより下りの方が面白かったかな?
無事テント場まで到着。山頂は雲の中でした。我々はラッキーでした。
3日目 剱沢キャンプ場ー立山ー雷鳥沢キャンプ場
剱と別れを告げ,立山に向かいました。
稜線に出るとそこはガスガスだった...。
でもなんだかんだ青空が見えてくるんですよ...。
雄山に付いたらばっちり青空が!晴れピークは嬉しいもんですね。
雄山は山頂に行くのに登拝料700円が必要でした。もちろん山頂の下で写真を撮りました。
最後に雷鳥沢カールを下って,キャンプ場へ。この日は近くの山小屋の温泉にも入りました。この長期縦走ではこの後もう一回風呂に入ります。
温泉後は差し入れの顔パックを楽しみました。
4日目 雷鳥沢キャンプ場ー室堂ーロッジくろよん
この日は1日目にも使ったアルペンルートを用いて,黒部湖畔のロッジくろよんまでの短い行程でした。
室堂ではこんなに人がいたのに。
ロッジくろよんには我々だけでした。
黒部ダムにも立ち寄りました。
5日目 沈殿
この日は朝から雨の予報でしたので,ここで沈殿しました。
6日目 ロッジくろよんー平ノ小屋ー奥黒部ヒュッテ
この日は黒部湖畔を登って行きました。1-4日目までと違って,全く人がいませんでした。これがまた良いんですよね。
ヤマメがいました。
平ノ小屋からは,平の渡しと言って船で対岸の針ノ木谷まで行かなければなりません。
合宿で船に乗れるなんて早々ありません。無料で黒部ダムを船で移動できるなんてなかなか経験できないことですね。
船を下りたら,木製のはしご天国でした。よくこんなところに作ってくれるなぁ...。
黒部湖のエメラルドグリーンが神秘的でした。
ロッジくろよんに到着。こんなところに山小屋が...て感じでした。
またもやテン場は我々だけでした。広々使えて良かったです。
7日目 沈殿
天気図や予報を見ても,朝から雨が降りそうだったので沈殿しました。
読売新道を登る前の計画的な2回の沈殿で,だいぶ体力を回復できました。
ロッジくろよんのお風呂にも入らせてもらいました。
8日目 ロッジくろよんー読売新道ー赤牛岳ー水晶岳ー水晶小屋
夜中の3時半出発。周りは真っ暗ですがこの日のコースタイムは驚異の10時間40分!!このくらいの時間から登り始めないと,水晶小屋までたどり着けません。
読売新道は,読売新聞社が開設した道です。この10時間の行程の間に山小屋,水場が一切ない尾根道がひたすら続く,北アルプスの中でも特にマイナーなルートです。
当ワンゲルの過去の長期縦走では,読売新道を下りで採用していました。しかし,私は何かしらの反骨精神からか,この道を登りで使いたいと思いました。そのために必要な,体力,技術を養うために,夏休み前に結成登山を行ってきました。
当日も天気がそこまで悪くなかったことも功を奏し,赤牛岳までは順調に登ることができました。
奥には赤牛岳が見えます。この時まではすごく天気が良かった...。
途中までは見事な快晴!奥に黒部湖が見えます。しかし,雲からもわかる通りめちゃくちゃ強風でした。そんなに上空の風が強いとなると...。
赤牛岳到着!...のはずが山頂ではガスの中へ...。ここからの景色を一番見たかったの
に...残念!
ここまでは非常に順調でした。でも,読売新道はここからが大変でした...。
一気に奥黒部ヒュッテから赤牛岳まで登ったので,メンバーにはそこそこに疲労が来ていました。さらに,水晶小屋までの稜線のアップダウンは読売新道の厳しさを痛感させられました。
一番奥に見えるのが水晶岳。赤牛岳まで辿り着いても,なお遠く感じた...。
やっと真ん前に水晶が見えてきた!これは晴れピーク行けるぞ!って思いでラストスパート登っていきましたが...。
水晶岳到着!!またもやガスの中へ...。皆顔が疲れていますね。
その後,なんとか水晶小屋に15:30ごろ到着しました。この日は朝3:30から行動開始したので,休憩時間を含めると12時間行動していました。それには流石のTくんもお疲れの様子でした。
9日目 水晶小屋~鷲馬岳~黒部五郎岳~黒部五郎小舎
長期縦走も終盤が近づいて参りました。
まずは鷲馬岳に向かいました。
前日の疲れからか,まさかの寝坊!!
でもこの日の天気は朝から最高でした。
すげぇ!!今見ても心揺さぶられます。北鎌いつか行ってみたいなぁ。
鷲馬岳到着!快晴!
西側から見る槍穂も良いですね。東側から見ることが多いので新鮮でした。
にしても北鎌,硫黄尾根,いかつい。
鷲馬に別れを告げ,次は三俣蓮華岳の北斜面をトラバースして黒部五郎岳に向かいました。
後方右が鷲馬岳。美しい山容で有名です。女優の釈由美子さんがヤマケイの特集で好きな百名山にしていたような・・・。
黒部五郎岳が見えてきました。黒部五郎岳は氷河で侵食された,大きなカール地形が有名です。黒部山域はこのような氷河地形が数多く見られます。私も地球科学をかじっている学生の一人なので,縦走中北アルプスの地形を見るのも楽しかったです。
無事山頂に到着!前日の長時間行程に引き続き,本日もそこそこに長い行程でした。1年生の二人はお疲れの様子でした。
この日は黒部五郎小舎にテン泊しました。この小屋では,私の研究室の先輩にも会いました。一度別の山行でもお会いしているのですが,まさかここでも?となりました笑。
10日目 黒部五郎小舎ー三俣蓮華岳ー双六岳ー双六小屋
黒部五郎に別れを告げ出発。
朝からガスガスでした。三俣蓮華岳までは案の定何も見えませんでした。
それでもなんだかんだ晴れてきたんですよね~。
双六岳到着!!
なんということでしょうか!素晴らしい景色!
私,雨男のはずなんですがね...。今回の山行では雨ピークはゼロでした。
もってるなぁ。
今回の山行の最後のピークなので,今まで歩いてきた稜線をバックに写真を撮りました。
バットも大活躍??
双六小屋到着!テントがいっぱいでした。
到着してテントを張ってからしばらくすると,あたりはガスに包まれていました。
これで私の長期縦走は,新穂高温泉に下山するのみとなりました。
名残惜しいようですが,後は下界に下りるだけです。
ラストスパート!!
11日目 双六小屋ー鏡平山荘ー新穂高温泉
朝から空には雲一つありませんでした。最後まで俺持ってるなぁ!!
日が出る前に出発しました。
夜明け前のテン場って,なんだか幻想的ですよね。
日の出も綺麗に眺められました。
道中の鏡平山荘では,かき氷やコーヒーフロートを売っていたので,衝動的に買ってしまいました。
山でこういうのも楽しめるのは良いですね。
冷たい雪解け水がジャバジャバ流れていました。暑さが増していることで下界に近づいていることを薄々感じながら,この沢の水をかぶるとすごく心地よかったです。
林道が出てきました。どんどん下界に近づいている...。
やっと下界に戻れる喜びの反面,戻りたくない,まだ山に居たいと思う気持ちが入り乱れていました。
わさび平小屋では,生野菜が売っていました。11日ぶりの生野菜なので,これがうまいことうまいこと。
そんなこんなで,下山してしまいました(すごくあっさり)。
最後は,この長期縦走の完走の喜びをかみしめながら,下山口まで全員でダッシュしました。
最後の最後が,すごくあっさりしてしまいましたが,なんとか全員無事に長期行程の山行を終えることができました。剱沢雪渓に行くことは叶いませんでしたが,ピークには全て行くことができ,なおかつ雨にほとんど降られなかったので非常に運が良く,最後まで充実した山行を楽しめました。
昨年度コロナ禍で十分に活動ができていないため,今回の長期縦走は少なからず不安がありました。しかし,天気も味方し,メンバー全員無事に最後まで歩き通すことが出来ました。本当に後輩たちは良く頑張ってくれました。
最後になりますが,このコロナ禍で数々の制約を受けながら活動を続けていくのは,非常に厳しいものがありました。また,コロナ禍にも関わらずこのような活動を続けていくのに,賛否両論があることは承知しています。しかし,山と真摯に向き合うことや,安全登山への強い認識は,数多く山行を重ねることでより深められる,とも考えます。まだこの混乱が続いていくのかもわかりませんが,信大ワンゲルの存在意義とも言えるこの長期縦走ができる限り,次年度以降も継続してもらえれば...と願っています。
それでは,また.元気でお会いしましょう!
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