大山行合宿 2025/8/17~26




どうも、23の小林です。

 

今回は夏合宿「大山行」について記そうと思います。

 

行程の計画としては、以下の概念図のとおり、黒部ダムから入山して五色ヶ原や薬師岳、雲ノ平、水晶岳、黒部五郎岳などを経由しながら最後に槍ヶ岳に登って下山するといったものです。



ダラダラ書いてもしょうがないので早速入山!

 

1日目:黒部ダム→平ノ小屋

 扇沢駅から始発の電気バスで黒部ダム駅まで向かい、黒部ダムの堰堤を歩き、ケーブルカーの乗り場前の行列を横切ってロッジくろよん、平ノ小屋方面に向かいます。

 平ノ小屋までは黒部湖の湖畔の細い道をひたすら歩くといった感じのもの。思っていたよりも道が細いし、状態のよくないハシゴもあり、中々に疲れました。


 そうして5時間弱かけて着いたのは本日の宿泊地の平ノ小屋。夕飯まで時間があるということでみんなで嗜好品・おやつタイム。

 普段の週末山行では味わえないこののんびり感はやはり何にも代え難いですね。合宿はいいなぁ。そんななか、愛し合っている蜂のつがいが机におりました。しかし、25のIちゃんが沸騰したやかんをガスバーナー上から机に置こうとしたときに、熱々のやかんの底が蜂たちに覆い被さってしまいました。蜂のつがいは愛し合っている状態のまま即死。まさかのタイミングで殺され、さらにその死因は前代未聞の「溶接」。そう、これがIちゃんが虫の溶接工としてのキャリアをスタートさせた瞬間なのです。おそらく世界で最初で最後の職人なので、後継者の現れぬまま彼が引退すると、世界から虫の溶接技術が消えてなくなるわけです。(志のある方はワンゲルのInstagramのDMからどうぞ。マイナビとかでは募集してないです。)その後色々と話していると、Iちゃんが幼い頃に蟻地獄を襲撃していた過去も明らかになり、一同驚愕。どうやら生まれながらの虫殺しだったようです。アース製薬とかに就職すれば、大型新人としてとんでもないスピードで出世しそう。

↑お土産で買ったメモ差しと。グッナイです。

 

2日目:平ノ小屋→五色ヶ原山荘

 そして翌朝、当初は4時半頃から行動開始して、宿泊地の五色ヶ原で思う存分のんびり過ごそう!ってな計画だったのですが、まだ暗い中机(前日の溶接作業場)でご飯を炊いていたら近くの森の中から「クゥ、クゥ」や「クァ、クァ」といった動物の鳴き声が聞こえてきました。なんだかクマのような気がしたので一旦調理を取りやめて、行動開始も日が明けてからにすることにしました。暗闇でクマと鉢合わせなんかしたら大変なので...。(ブログを書くにあたり、クマの鳴き声を調べてみましたが、おそらくクマで合っていると思います。)


 これは2階の窓から見えた黒部湖です。なんだかすごく綺麗で、個人的に結構印象に残ってます。小屋番さんからは寝坊を疑われ、「(君たちの部活、)ゆるいね」とのお言葉(余裕で悪口)を頂戴しました。5人とも苦笑いしかできず、そそくさと出発。

 この日は五色ヶ原までの急登を登るだけ。出発は遅れましたが、なんだかんだ12時前には到着。鬱蒼とした雰囲気の苅安峠を抜けて、長い急登を登りきって、広くて青々とした五色ヶ原が見えた瞬間は最高でした。立山側やスゴ乗越側から辿り着くのとはまた別の味わいがあります。



 とにかく小屋が好きな24のD君、早速小屋を物色したのちに25のDちゃんとカツカレーを食べていました。「このためにバイト頑張ってきたんですよ」と言う。なんて素敵なんだ。 




五色ヶ原は去年も来た際(BULLS合宿)に、またゆっくりしに来たいなーと思っていたので、思い切って翌日は沈(停滞)にすることに決定。


 


3日目:沈(停滞)

 翌朝、テントの外からみんなの喋り声が聞こえてようやく起床、テントのチャックを開けるとそこには快晴の五色ヶ原。すっかり幸せな朝を迎えていたのですが、他のメンバーによると、僕が寝言で「もう嫌ダァァァァァァーーー」などと、うなされていたとのこと。なんなんこのリーダー。やめちまえ。

 野球盤で遊んだりなんか木工したり昼寝したり散歩したりして各々のんびりしました。

 そしてテント内での昼寝(僕は昼寝が本当に大好きなんです。)を堪能していた僕ですが、気づいたら足がこんなことになっていました。(写真は翌日のもの)

 D君に「コバさん。その赤、なんですか?」と聞かれても「知らん」とか言って適当に流していたら、夕飯くらいになって物凄い激痛が走りはじめました。「日焼けは火傷」と言いますが、本当に患部を触ると熱いんですよ。絵面は想像しただけで最悪ですけども、目玉焼きなら半熟までは焼けたと思いますし、ジャズポップコーンとかも全然できたと思います。あ、でも、火力をアピールし過ぎると溶接工の作業道具にされかねないのでこれくらいにしておきます。

 

4日目:五色ヶ原山荘→スゴ乗越小屋

 この日は越中沢岳やスゴ乗越を経てスゴ乗越小屋まで。この区間は行程時間だけ見ると、キツそうには思えないのですが、とにかくアップダウンが激しくて大変でした。越中沢岳から先は、道自体も歩きづらくて特にしんどかったです。

 そんなこんなで、やっとの思いで着いたスゴ乗越小屋。名物のカレーをみんなでかき込みます。豆など沢山の具材が入っていて、おいしい。あと、この銀色の皿が素敵です。この皿からアミノ酸が出てるまである。


 大食漢のD君もある程度腹が満たされたようで、「ちょっと爆撃してくるわ」などと言ってバイオトイレへと去って行きました。バイオトイレは、便器の下の槽に大量の微生物がいて、そいつらが排泄物を分解するといった仕組みになっています。で、D君は彼らが分解しきれないほど大量の排泄物を投下して、微生物たちの息の根を止めてやろうと躍起になっていたようです。顔がガチでした。だから、トイレに行くのを「爆撃」などと言っていたわけで、さらにご丁寧なことに、毎回トイレから帰ってきた後に爆撃結果を教えてくれるんですよ。「全滅させました!」とか。

 なんか面白くて、このノリは合宿の最後の方まで続いていきました。僕がD君に対して、「D君!今さっきトイレ行ったけど、全然歯が立たなかったわ!余裕で分解されたわ。」などと言うと、D君は「絶対コバさんの仇を取ってきます!」とか「もうちょっと貯めてから行きます。」といった返しをしてくれる場面もありました。バイオトイレを介して、メンバー間の絆が垣間見える熱い(異様な?)場面でした。とにかく、大山行の男どもは、もうお花を摘みに行くとかそういう次元にはいないです。

 

5日目:スゴ乗越小屋→薬師岳→太郎平小屋

 ヘッテン行動で、薬師岳方面へと向かいます。4時間半ほどで薬師岳に到着したものの、ガスガス。少し晴れ間を待ちましたが、ガスガス。はいはいもうおしまいおしまい。


 ってなわけで、行動を再開し、スゴ乗越小屋から7時間半ほどかけて、ようやく太郎平小屋に到着。


 

 一日のご褒美として、太郎平小屋で人気の(?)太郎ラーメンを食べました。(僕は寝ていました)


 

 この後、「豚キム!豚キム!」や「めんどくさ」などといった名言が生まれました。(僕は寝ていました)


 

 テントサイトに大きなザックを背負った大学生らしきパーティがおり、夕飯後に思いきって少しおしゃべりしました。(僕は寝ていました) 行程を教えあったり、お互いの部活での山行の話をするなどなど...こういった交流も楽しいですね。(僕は寝る方が楽しい)

 


↑夕刻の太郎平。太郎平から北ノ俣岳方面へ広がる草原がものすごくきれいで個人的には合宿で一番の景色でした...。

 

6日目:太郎平小屋→薬師沢小屋→雲ノ平山荘

 この日の行程は一旦下って薬師沢小屋を経てまたまた登って雲ノ平まで。僕としては、昨日の夕焼けを見てすっかり満足してしまいましたが、太郎平小屋で現地解散していいわけがないので合宿を続けます。小屋にデポさせていただいていた後半分の食糧などを受け取って再び重くなったザックを背負います。


 

 木道の多い道を歩き、2時間ほどで薬師沢小屋に到着。

 


 

 小屋の前を走る沢でちょっと水遊びして、雲ノ平までの急登に向けて気分転換できたらいいねーくらいに思って、行程に入れた記憶があります。

 そしたら、溶接工のIちゃんが海パン一丁になり、キンキンの沢を平泳ぎで渡渉開始。



 

特殊な訓練を受けています。特殊な訓練を受けていません。(全力で我慢しているだけです。彼自身で小屋番さんに許可だけ貰っています。)

 「泣きたくなったら山に来い」ってな素敵な言葉がありますよね。(たしか、高山裏避難小屋のTシャツのデザインになっていたような。)ですけど、そういう何もかもが嫌になってなんにも考えたくないときって、山じゃなくて、水の流れる音で脳内の声が全部かき消してくれるこういう川とか海の方がいいような気がするんですよね、個人的に。そんなことを考えていたのですが、平泳ぎ渡渉ニキ(Iちゃん肩書き多すぎ)のせいでそれどころじゃなくなりました。すぐさま向こう岸に追い返して沢から上がらせたのち、日向で乾燥させました。なんで薬師沢でプール監視員みたいなことしないといけないんだよ!


 薬師沢を存分に満喫して再出発!薬師沢小屋のトレードマークである巨大な吊り橋を渡ったら、その後はひたすら急登です。急登は何よりも気合が大切なので、「行くぞゴラァァァァーー!!!!」や「うぉぉぉぉぉおおお」、「魂込めろ」などと吠えながら登ってゆきました。雲ノ平に向かう道ということもあって登山客は多く、そうした人たちとすれ違う度に怪訝な目で見られました。急登後のめっちゃ平坦な木道でも「死ぬ気で行ゲェェェエエエーー!!!!」などと吠えてた(アホ?)ので、まぁそりゃそうか。

  


 で、昼前に雲ノ平山荘に到着。



 小屋好きのD君はこの雲ノ平山荘が合宿一の目当てだったようで、着くやいなや大興奮していました。雲ノ平山荘限定のモンベルTシャツを買い、山荘内のおしゃれな食堂(カフェテラス?)で軽食を楽しみ、本棚の本でゆっくり読書する、といった感じで大満喫。この幸せそうな顔ですよ。

 


 でも、致死量レベルのドーパミンのせいで、本の内容なんておそらく一つも頭に入ってないです。

 僕の同期に、「雲ノ平は"最後の秘境"とかいう謳い文句を取り下げろ」といった暴力的な主張を唱えている男の子がおりまして、僕の中で雲ノ平の前評判はあまり良くなかったのですが、正直かなり綺麗でした。D君も言っていましたが、祖母岳(雲ノ平山荘から少し西に行ったところにあるピーク)からの眺望が何気にオヌヌメです。

↑D君持参の写ルンですの写真。たしか祖母岳あたり。


↑この日の夕飯。ビーフシチュー。

 

7日目:雲ノ平山荘→祖父岳→黒部源流碑→三俣山荘

 雲ノ平のテント場から祖父岳までヘッドランプを点けて向かい、頂上にて日の出を待ちました。ここの頂上は蓼科山みたいですね、あの小惑星みたいな雰囲気がありました。

 


↑槍ヶ岳は遥か。

 

 その後、祖父岳から水晶小屋方面へ向かう途中でMさんが足を挫いて負傷してしまいました。しばらく安静にしてテーピングも巻きましたが、歩くのが大変そうだったので、ピークは回収せずに三俣山荘まで直行することにしました。残りの男4人で荷物を分配して代わりに持つなどして、なんとか三俣山荘に到着。一安心です。


 ケガの様子も見ながら、小屋でのんびりしました。昨日の雲ノ平山荘に続き、ここの食堂もえらくおしゃれ。



 ↑就寝前の爆撃をしに行った際の三俣山荘。おっしゃれ〜。

 

8日目:沈(停滞)

 この日は、ケガの痛むMさんとその付添1名をテント場に残して、3人パーティにて黒部五郎岳までアタックする計画でした。しかしながら、僕が前日の疲労が抜けきらず、これ以上何かあっても大変だなと怖くなり、大事を取ってアタックは取り止めました。下界の生活では「やらなかった後悔よりもやった後悔」ってな安っぽい言葉に背中を押してもらうことが多いのですが、登山にかんしては下手にやると後悔どころじゃなくて死ぬので.....怖くなって踏み止まってしまいました。

 そしたら溶接工が木工を始めていました。なんでだよ。でも話を聞くと、どうやらMさん用のストックだそう。イイ男!

 


で、しばらくのんびりしていると、同期のKさん(雲ノ平のデモ隊の男の子ではない)がサプライズ訪問してくれました。

 深夜の2時に新穂高温泉を出発して、8時前に三俣山荘に到着し、その日のうちに新穂高まで帰るという鬼行程。鬼クソのんびり行程の大山行メンバーはみな唖然です。「しかも日帰り山行なのに100Lのメインザックで来てるし...。なんなのこの男性...。」などと思っていると、その中からこんな素敵なお手製のチーズケーキが出てきました!


 そうなんです、実はこの日は僕の誕生日だったんです。どうやらそのお祝いもかねて来てくれたようです。すっかり傷心状態だったので、こんなに美味しいケーキ食べたり、たくさん喋ったりできて、あまりにも嬉しかったです。それにしても、誕生日にしては足が焼けすぎてる。

 


 

9日目:三俣山荘→三俣蓮華岳→双六岳→双六小屋

 この日から行動を再開しました。無理は禁物ということで、三俣蓮華岳と双六岳を経由しながらゆっくりと双六小屋へ向かいます。



 1時間ほどで三俣蓮華岳へ到着。めちゃめちゃにガスガス!


なので、僕はゼクシィを読んでいました。


 三俣蓮華岳の一番の特徴である三県境にて、結婚式の費用などについて学びました。まじで結婚式はヤクザ価格。(山の上でゼクシィ読むに至った経緯はですね、夏前に彼女持ちの先輩から自身の結婚の話をうっすらとかまされて、それに対して正気を保つことができなくて、せめてでも座学を始めなければと思ったからといった感じです。で、いざ開いたらよ、結婚後のことしか書いてじゃねぇか!)

↑三俣蓮華岳から双六岳へ向かう途中。ここもかなりきれいだった記憶がありますね。

 

 で、双六岳のピークを回収して、「天空の滑走路」として有名な地点で写真をあれこれ撮りながらのんびりしました。またまた、D君持参の写るんですの写真。イイネ!


 双六小屋には10時過ぎに到着。小屋食を食べたりお土産を選んだりしたら、気づけば夕食の時間。

 


 この日の担当は25のDちゃんです。彼は太郎平小屋でもエッセンを作っていたのですが、その際に付け合わせとしてジップロックで保管していたレーズンパンを提供しており、調理にかんしての信用が少し低くなっていました。賞味期限内だったらしいですが、入山から5日経った状態のパンですよ!?カンカン照りのザックの中に5日間も入っていたパンですよ!?

 で、そんな彼に献立を聞いたら、「野菜ジュースを使ったスープを作ります」とのこと。ダメだ、もうだいぶ怪しい。紫色の野菜ジュースがたっぷり入った鍋を火にかけ、牛乳やらコンソメやら乾燥野菜などを入れてゆき、さらに火をかけてゆく。この料理の終着点はきっと「ホットの野菜ジュース」だと悟り、僕は頭を抱えてしまいました。こんな感じでどんよりムードになっていたところ、「ガッシャーン」という音がしました。


 はい、このとおり。Dちゃんがバランスを崩して、鍋をぶちまけました。エイリアンの死亡現場(出血死)だとか国立公園でスプラトゥーンだとか、とにかく言われたい放題でした。Dちゃんは調理にかんしての信用がまた一段階下がってしまいました。その一方で、Dちゃん以外の全員は、食べるのを回避できて正直ほっとしたと思います。予備日の食事として用意していたレトルトとご飯を食べて、就寝。

 

10日目:双六小屋→新穂高温泉

 テントに雨が降りつける音で起床。時間の余裕もあるので雨が降り止んでから行動開始。思えば、この合宿で雨に降られたのはこの時だけでした。


 鏡平山荘やわさび平小屋を経由しながら、双六小屋からおよそ7時間で新穂高温泉に下山完了!


 

 当初の行程とは違った形で新穂高温泉にゴールインすることとなりましたが、そんなことより、アクシデントがありながらも無事下山できたことに感謝です。合宿に行ってよかったと思えただけで十分です。



おわりに

 僕は、新しいことを始めてみたいというのと、地元では味わえないような雄大な自然を楽しみたいといった思いから、ワンゲルに入部しました。それで、この3年間たくさんの山に登ってきたわけですが、正直なところ、山というか登山自体の楽しさにあまり気づけませんでした。去年はザックも落としてしまいましたし。

 ですが、今回で言うと例えば、蜂の溶接だとか、鷲羽岳南側斜面の急すぎる事案(本編未公開)、バイオトイレの爆撃破壊、食べ物でスプラトゥーンなどなど......なんかそういうのが楽しすぎて、結局退部せぬまま3年生までいてしまいました。

 山のきれいな景色とかじゃなくて、そういった笑える出来事ややり取りとかが起こるのを目当てにして、なんとか山に登っていた自分は、コスパの観点で終わり果てているし、部員としても失格みたいなもんです。だけど、まぁこんなワンゲルの楽しみ方もきっといいよね。そんなことを思う、ある冬の夜。

2025年12月28日 小林祐希

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!(7000文字も書いてしまったようです...。)


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