追悼LW(燕岳) 2019/9/19~20

こんにちは。三年の新倉です。



       信大ワンゲルでは、毎年9月中旬に、冬の燕岳でお亡くなりになったOBの追悼山行を行なっている。この記事を書くにあたって、丁寧に山行報告を書くようにとお達しがあった。「今のワンゲルの活動を知ってもらおう。」と言う気持ちもそれなりに理解できるが、そもそも、燕岳を知らない人がいることを考えれば、皆さんに燕岳の情報を提供することは、私の役割と考える。


 燕岳は、前衛峰の有明山の右肩から、頭をちょこんと覗かせて安曇野を見下ろしている。この山は、意外にも下から望むと大して目立つ山ではない。しかし、夕暮れになるとその様子は一変する。山頂付近に、さながら宵の明星の如く煌々と輝く灯が現れるのだ。燕山荘である。私の故郷は燕岳を望む北安曇にある。まだよく父に連れられて散歩をしていた頃、夕闇に浮かぶ燕山荘を見ては、「あそこには鬼がいるに違いない」と、どちらかと言うとスピリチュアルな思いを抱いていた。実際、燕岳には鬼の伝承が残っている。安曇野の伝承に「八面大王伝説」がある。概要は省略するが、征夷大将軍坂上田村麻呂は、「八面大王」の奥方を、なかなか討つことが出来ずにいた。困った坂上田村麻呂は、燕岳の尾根に登り、矢を射かけてようやく彼女を討ち取った。この尾根が合戦尾根である。こんにちでは、合戦尾根小屋のスイカが名物になっている。



 燕岳は、北アルプスの中でもとりわけ愛好されている。理由はいくつもあるが、一つに、

類を見ない山容がある。燕岳は花崗岩の塊で出来ている。花崗岩とは、河原に落ちているあちこちキラキラしたあの石のことだ。長い風化作用によって、花崗岩がボロボロになった燕岳山頂は、砂浜に奇岩がそびえ立つ、さながら異界のようだ。この白い天空歩道は、私の心をむんずと掴んで離してくれない。それ以外にも、表銀座の起点として古くから親しまれてきた歴史があり、日本最高と称される山小屋を有する燕岳は、こんにちも多くの登山者が訪れている

 こんな素敵な山も人を殺す。山にしてみれば勝手に登って何だと思うかもしれないが。我々は過去の教訓、そしてそれを脈々と受け継いできてくださったOB.OGの皆様、支えてくださる山の同胞の皆様のおかげで山に登ることができる。「感謝を忘れず、誠実に、正しく山に向き合おう。信大ワンゲルの一員として、山を愛する一人の人間として、私に何ができるのか。」そんなことを考えさせるのが燕岳である。

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